蕎麦について
蕎麦について >>> 蕎麦の生産・栽培・収穫◆生産
アジア内陸部、ヨーロッパ各地、南ヨーロッパの山岳地帯、南北アメリカ等で栽培されており、世界最大の生産国は中国で、ロシア・ウクライナがそれに続きます。
日本においては北海道が最大の生産量を誇ります。
発祥地は、東アジア北部、アムール州の上流沿岸から中国北東部にわたる一帯とされて来ましたが、最近では中国西南部山岳地帯の雲貴高原(雲南省)だと言う説が有力になっています。
栽培されている蕎麦は、大きく分けると三種類あるとされています。
普通蕎麦(普通種)、韃靼蕎麦(ダッタン種)、宿根蕎麦(宿根種)の3種類です。
そのうち、食用に栽培されているのは、普通蕎麦と韃靼蕎麦の2種類です。
玄蕎麦(収穫したばかりの殻つきの蕎麦)の品質が良い生育場所としては、
■稲の生育には適さない場所である
■土地がやせている
■水はけの良い畑
■高地の冷涼な気候
■昼夜の温度差が激しい寒冷地
■日当たりの良い畑
などです。
条件を見ると、悪い土地に生育したものが一番良いというのだから驚きです。
夜の気温差が大きいほど実が締まり、タンパク質などの栄養に富んだうまい蕎麦が取れるようです。
◆蕎麦の栽培・収穫【概要】
蕎麦はできるまでの日数が約75日と言われるほど、種まきから収穫までの期間が非常に短いのが特徴で、夏と秋に収穫されます。実際の栽培期間は夏蕎麦は70日〜85日、秋蕎麦は80日〜90日位必要なようです。
夏蕎麦は、4月上旬〜6月下旬頃に種まきを行い、収穫は6月中旬〜8月中旬となります。
夏蕎麦は30日前後で開花し、夏の高温下でも結実します。
夏蕎麦は特に発芽時の湿害に注意が必要です。蕎麦は湿度に弱い作物で、田畑の排水対策を万全にすることが大切になってきます。
秋蕎麦は、7月〜9月頃に種まきを行い、収穫は9月中旬〜11月中旬となります。
秋蕎麦は種まきを遅くすると結実が良好になり、早くすると茎や葉が伸びすぎて結実が著しく阻害されるようです。
秋蕎麦は、夏蕎麦に比べて風味が良く、色調も優れているそうです。理由としては、蕎麦の花粉発芽の適温が20度以下の冷涼な気候で、日照時間が長い事が挙げられる為、夏よりも秋蕎麦の方が良いようです。
◆蕎麦の栽培・収穫【詳細】
1.土壌の準備
夏・秋蕎麦ともに、より良い食味・品質・安定生産のために、播種前(種まき前)の土の大きさが、出芽のそろい方に大きく影響するので、耕耘(※)は圃場(※)が十分乾燥してから行って、土は細かくする必要があります。
※耕耘(こううん):田畑を耕す作業の一つで、おもに整地や中耕除草を目的として行われます。
※圃場(ほじょう):作物を栽培する田畑、農園のこと
2.播種(種まき)
蕎麦は早くまくと結実が悪く、遅すぎると成熟以前に霜にあって、子実が落ちて減収するので、地域の初霜の時期を参考に播種期を決定することが大切だそうです。
播種には「スジまき」や「ばらまき」があり、
●「スジまき」
イメージとして田んぼの苗のように整然と種をまく方法の事で条間(※)70cm、まき幅15cm、覆土2〜3cmでまきます。
●「ばらまき」
その名前通り、種をばらまくまき方で、方法は手まき、散粒機などがあります。まく量としては1a(=約30坪、約100平方メートル)で0.4〜0.5kgぐらいが目安です。
※条間(じょうかん):作物を植えつけた列を条といい、条と条の間隔を条間という
3.施肥(せひ):農作物などに、肥料を与えること
蕎麦は、五穀の内には加えられず救荒作物の一つとして有名で、痩せ地でもよく生育し、虫もつかず、手のかからない作物です。しかし、毎年作っていると土地が痩せてくるので、適当な肥料が必要となり、焼き畑をしたり牛糞を撒いたりということが行われています。 |
※過繁茂(かはんも):茎葉が茂りすぎて着果や果実の肥大または結球などを阻げ、さらに 風通しが悪くなり病虫害の被害が増大する
4.中耕・培土(雑草を引き抜くこと)
中耕・培土は、蕎麦の本葉4〜5枚(播種20〜30日後)ぐらいから 2回程度雑草防除を目的に実施しますが、根を傷めないように注意が必要です。だいたい開花期までには終えるようにします。
5.受粉
蕎麦の花は長柱花と短柱花に分かれます。
長柱花は、めしべが長く、おしべが短い
短柱花は、めしべが短く、おしべが長い
結実は、長柱花には短柱花の、短柱花には長柱花の花粉が必要です。1つの株から2種類の花は咲きませんので、別々の株に咲いた2種類の花同士でないと受粉しないので、蕎麦の結実は稲や麦より少ないようです。
6.収穫
前記1〜5に気をつけた上でようやく収穫となります。蕎麦は、開花や成熟が不ぞろいで収穫時期の判断が非常に難しい作物です。おおよその収穫目安は葉が落ち、稔実が進むと黒褐色になってきますので、 70〜80%ほど黒褐色に変色した頃が収穫(刈り取り)適期です。 |
(最近では蕎麦の成熟早期、まだ緑色の粒が混ざっている時期に収穫したものが風味が良いと言われて、収穫されるものもあるようです。しかし収穫機械や品質に支障をきたしたり、品質の未解明な部分が多くあるようで、まだ一般的では無いようです。)
7.乾燥・脱穀
収穫をした後、茎を束ねて立たせ、互いに寄せかけて「島立」にします。島立にすると、未熟の実が根と茎から養分を吸収して追熟が行われます。
島立にして1週間程度乾燥させた後、棒で叩いたり、ドラム缶に叩きつけるなどの手作業や脱穀機などで脱粒し、脱粒したら天日乾燥や乾燥機を利用して水分が15%程度になるように仕上げ乾燥を行います。天日乾燥の場合はシートに広げて何回もかき混ぜながら約一週間以上天日に当てて乾燥させ、乾燥機の場合は温風で強制的に乾燥させます。
(これらの乾燥方法では、天日干しの蕎麦の方が味と香りに深みが増すので美味しいようですが、乾燥機で行う方が効率が良いので現状では主流です。)
仕上げ乾燥後は、唐箕(※)などで選粒します。
収穫量は気候と土壌によりますが、上記1〜7を上手くやれば、1a(30坪)当たり、
普通は10〜15kg
プロですと45kg
になるそうです。二八蕎麦の分量で考えれば最高で約180食分(普通の収穫量では42食分)になります。
※唐箕(とうみ):収穫した穀物を脱穀した後、籾殻や藁屑を風によって選別する農具
8.保管
昔は、地下や横穴など温度変化の少ない場所に貯蔵したそうですが、現在は玄蕎麦のまま低温を施した場所に貯蔵保管します。温度8℃、湿度70%位がちょうどいいようですが、玄蕎麦の質や使用時期によって若干温度や湿度を調整するようです。
(使用時期が遅いものは温度を下げ湿度を高めるなどするようです)
蕎麦粉は貯蔵場所から運搬される際の急激な温度変化にも敏感に反応するようですので、最後まで気が抜けませんね。